記者会見

要するにズボラで業界的にKYだったっつー認識でいいのかな。



ズボラであることにもナイーブであることにも同情はしない、というか、いかなる意味においても同情の余地はないと思うけど、少なくとも、見てて胸糞悪くなるような会見ではなかったと思うのは同世代ゆえの贔屓目なのか、どうなのか。





三雲はしくじる。この場は無事通れても、組織のどこかで八つ裂きにされる。
(中略)
三上は目を閉じていた。
人が殺された血生臭い現場で、人を殺してはいけないと聞かされた気分だった。交番原理主義の文法を公報に当て嵌めてみたところで、窓はおろか、分厚い壁には針の穴すら空くまい。いかんともしがたい温度差が脱力感を呼び込みもする。三雲がいくら熱弁を揮おうとも、それは記者対策に知恵を絞る広報室の姿であって、上層部の抗争に呑まれて窒息寸前の広報室とは響き合わない。
だが―。

「だが―」。。。














そして俺はなにゆえに、こんな上から目線でモノを考えちまってるのか。



二渡に迷いはなかった。恥じても怖じてもいなかった。立場が行動を決しているはずなのに、発した言葉には揺るぎない信念の響きすらあった。一つの体に一つの心。その潔癖なまでの非情さが三上を狼狽させていた。こちらの葛藤ばかりが炙り出された。境遇を嘆いている。己を憐れんでいる。だから二渡に傷の舐め合いを期待した。家族のために行動すると誓った。刑事部への復帰も諦めた。しかし生まれ変わったわけではない。そんな境地には程遠い。心は二つのままだ。どうにもならないとわかっているのにどうにかならないかと身悶えている。自己憐憫に首まで漬かって職務の意味さえ見失っている。情けない。自分を買いかぶっていた。よもやこんな不甲斐ない男だとは思ってもみなかった。

by 横山秀夫さん