徒労に終わるかもしれない

私、平野先輩を励みに仕事をしてるんです―。
真奈美はそう言った。瑞穂と同じ道を歩き、瑞穂と同じように傷ついている。そう言ったのかもしれない。男が、自分の中の男をより際立たせようと競い合う警察社会。そうした男たちの誇りを傷つけないよう常に神経をピリピリさせながら、婦警は心の片隅で、自分たちもれっきとした組織の一員なのだと声なき声で叫び続けている。必死で戦っている。懸命に食い下がっている。ほんの少しでも弱気になれば、今すぐにでも振り落とされてしまう。知っている。手を離してこぼれ落ちてしまえば楽になれるのだ。

by 横山秀夫





俺、森田先生を励みに仕事をしてるんです。