抽象的思考の無益

1.

プラトンの『クリトン』に現れたソクラテスの魂に心を撃たれぬ人は勿論人間ではないが、心を撃たれながらも自らを巧に卑下しながら赤い舌を出すことによって保身を全うせんとするのが我々の悪癖である。これに思いを致して慚愧感憤せざる時、我々は畢竟するに泥水にただ育々と生きる『考えざる葦』以外のものではなくなることを覚悟せねばならない。

by 渡辺一夫さん

2①.

無意味であることに耐えられないんですよ人間は。絶対何かを見ちゃうじゃないですか。ランダムなパターンや砂嵐にも何かが見える、みたいな。科学が差し出すものに意味がなければないほど、そこで耐える力をみんなで勉強すべきだと(笑)。

by 伊藤計劃さん

2②.

「わたしたちの理解できる物語は、大脳活動のほんの一部であるにすぎない。都合のよい言い逃れや嘘にまみれた御都合主義の寄せ集めです。わたしたちが目にしている情報は、背後の処理プロセスを隠蔽してしまったものです。通信ログの開示は、人間の思考の秘密そのものを明かすに等しい。今の人類にはまだ早すぎる知識ですよ。わたしたちはまだ、物語なき単調にして無限のリストからなる現実そのものに直面する準備ができていない。脳はスクリーンに絵を描く機械で、わたしたちはそれを漫然と眺めている観客にすぎず、画家の姿を見ることはできない」

by 円城塔さん










結局、今の俺の中にあるのは、この2つの間に自分なりの対立軸も引けず、善人面の上に作り笑いしか浮かべられない・正真正銘の善人に対する、殺意だ。



アドホックって言うんだよ。
具体のみの思考も無意味じゃないのか。
誰か叫べよそれを。

とも思うが。
敢えて他人に知らせる必要もないことでは、ある。
緩やかな腐敗を、ただ黙して眺めていればいいんだろう。